義歯治療

入れ歯治療で大切なこと

入れ歯に一番求められている役割は「しっかり噛めること」に他なりません。

歯を失った場合において様々な治療法がある中で、
入れ歯を選択するケースとしては、
・インプラントにするための骨がない
・支える歯がなくブリッジができない
・歯が移植できない
・矯正治療ができない

といった様々な状況が挙げられます。

とはいえ、歯を失った場合でも残っている部分的な歯で一応噛むことはできます。
しかしながらやはり「しっかり」噛むことはできないので、噛むという機能を補うという意味で、入れ歯を入れることはとても大切です。

では、「しっかり噛める」とはどういうことでしょうか?
それは「安定して噛める」ということだと考えております。

入れ歯はあくまで自分の歯ではなく噛むための「道具」ですから、その道具を上手に使うためには、その人にとって使いやすい「道具」でなければなりません。
そうでないとしっかり安定して噛むことは難しいでしょう。

では安定している入れ歯の特徴としては、
・リンゴやナッツなど硬いものでも噛める
・違和感がない
・あたりが少なく歯や粘膜に擦り傷が起きない

ということが挙げられます。

入れ歯づくりでおさえるべき3つのポイント

ここで安定した入れ歯づくりにおけるピラミッドがあります。
(どれも大切な要素ですが、上に行くほど重要と位置付けられています)

1.歯科技工士による工夫

まずベーシックなものとしては一番下に位置する「どのように歯を並べるか」「どのように歯と歯をかませるか?」ですが、これは当院が信頼している義歯専門歯科技工士さんの工夫や技術、またどういう材料を使うかといったことが大きい領域です。

2.型取り

その次に、2番目に位置する「型取り」になります。
歯がないところをどのように上手に型取るか、上手に型取ることが出来なければ当然安定した入れ歯の作製を叶えることはできません。

歯が抜けてもお口の中は決して真っ新な状態ではありません。
顎がやせている歯、舌が大きな口、唇が大きかったり小さかったり動く歯ぐきと動かない歯ぐきの境を分かりやすく型どることなど、顎に共通している「ランドマーク=基準点」というものがあります。

このランドマークが入れ歯を作るうえで大切であり、これをしっかり型取れるかどうかが、その後模型を起こしたときに、技工士さんが適正に作れるかどうかに影響してきます。
どんな材料でもよいからといっていい加減な型取りをすると、決して適正な入れ歯を作ることはできないでしょう。
そのランドマークをしっかり印記出来るような型取りの材料を使って行うことが大切になってきます。

3.適正な下アゴの位置

そして最上位に位置する最も大切なことは、「ぴったりの噛み合わせの位置」や「上顎に対する下顎の適正な位置関係」=適正下顎位を見つけること、これが最も入れ歯の安定に影響します。

これが最も大切であり、かつ難易度の高い技術や経験を有すると言われています。
なぜなら歯が失われている場合、歯が失われていることで、どうしても噛み合わせのゆがみがあったり、歯が伸びたり短くなっていたり、顎の位置が左右バラバラになっていることが多く、かつ歯が失われた状態をそのままにしている場合が多いからです。

歯が抜けた直後に良い入れ歯を入れていればよいのですが、(どのような理由で抜けたのかも影響します)患者様の様々な事情によりそのケースは少ないのが一般的です。
ですから噛み合わせがひどく乱れている場合が多いので、その分入れ歯が作りにおいて大切な「ぴったりの噛み合わせの位置」や「上顎に対する下顎の適正な位置関係(適正下顎位)」を見つけることが難しくなってきます。

しかしそれをないがしろにした入れ歯作りは、決して安定した入れ歯は実現できません。
安定した入れ歯作りは、顎にあった噛み合わせを見つけることではじめて達成されます。
(これは入れ歯でない他の治療においてとても大切なステップです)

噛み合わせを作り直す(咬合再構成)ときに必要なのは、顎にとってベストな噛み合わせの場所を見つけてあげること、場合によってはベストな噛み合わせの場所を作っていくことが大切です。
そのためには今までの適正でないかみ合わせの場所を仮の入れ歯で適正な場所に治してあげる事が必要になります。リハビリテーションと同じ意味を持ちます。いきなり骨格的に良いとされる位置に噛み合わせを作っても、なれることが難しいのです。
リハビリテーションによって適正下顎位(上顎に対する下顎の適正な位置関係)を見つけることが出来れば、ピラミッドの一つ下に位置する型取りを適切に行うことができます。

そしてピラミッド最下部に位置する「歯科技工士による工夫」=ぴったりの色や形の入れ歯を作りや、良い材料を使うことで最終的に安定した噛める入れ歯が実現します。

これらが当院が入れ歯作りにおいて大切にしている基本方針です。

一般的に、自費の入れ歯は材料に頼ることが多く、金属を使った入れ歯であれば安定すると言われていますが、材料の前に本当に大切なことは「ベストな噛み合わせ作れるかどうか」に懸かっていると考えております。

顎にとってベストな噛み合わせの位置を探す中でもう一つ大切なのが噛み合わせの高さ=咬合高径と言われるものです。
この高さが低すぎても高すぎてもしっかり噛むことはできないのでどこの高さで作るのかもとても大切になってきます。またかみ合わせの平面も大切です。歯並びと言われる平面をどのように設定するかもあわせて重要でその段階を踏まえて最終的な適正な噛み合わせの位置を決めていきます。

入れ歯の最終調整

上に歯と下の歯をどのように噛み合わせるのか
左右に動かしたときに、奥歯と前歯がどのように接触するのか、
噛み合わせの調整をするときに、入れ歯を入れた後の最後の微調整となります。

新しい入れ歯は新しい靴を新調するように、最初からすぐに馴染むわけではありません。
入れ歯の揺れは噛み合わせが原因なので、歯の干渉(微妙なズレ)を微調整していくことが入れ歯作りの最後の詰めとして大切なことになってきます。

上の入れ歯よりも下の入れ歯のほうが舌がある分、入れ歯の安定を実現するのは一般的に難しいと言われています。
ですから下の入れ歯もランドマーク(基準点)をしっかり意識して作ってあげることが安定した入れ歯作りにつながります。

~大切なお口のリハビリテーション(オーラルリハビリテーション)~

通常リハビリテーションセンターでは、今までしっかり動かすことができなかった身体の一部を動かせるようにするための機能回復のための訓練を行っています。
同じように、今までしっかり噛めなかった状態を適正に噛めるようにしていくことを「オーラルリハビリテーション」と言います。

新しい入れ歯を入れたとしても、今までの噛み方では正しく使うことができません。
まずは今までの悪習癖や噛み方を変えていくためのリハビリ期間が必要となりますが、その際に「仮の入れ歯」がリハビリを補助する道具としての役割を果たします。

仮の入れ歯でオーラルリハビリテーションを行い適正に噛めるようになっていくことで、適正下顎位(上顎に対する下顎の適正な位置関係)を見つけ出すことを目指します。
その結果最終的により安定してより噛める本入れ歯を作製することができます。

最終的な本入れ歯を入れた後、よりしっかり噛めるようになり今まで失われていた本来の噛む機能が回復してくることになります。
その結果、当然お口の周りの筋肉も変わってくるのでその変化に対応するため本入れ歯の調整も必要になってきます。

具体的には、人工歯や歯が摩耗して形が変わってきたり、歯ぐきの形自体の変化、顎の動かし方も変わってくることにより干渉(歯に間違った方向から間違った部位に力が加わっていること)も起きてくるので、それに合わせて入れ歯を調整してくことも「安定して噛める入れ歯」を作るための大切な工程となります。

部分入れ歯
~コーヌスクローネテレスコープという入れ歯~

部分入れ歯は噛み合わせを大きく変えることができません。
ですから安定した部分入れ歯作りにおいて大切なことは、「どのようなバネを作るか」という設計が重要になります。

バネのデメリットとしては、どうしてもバネが見えてしまい審美的な抵抗感があるということでしょう。
ですからそのバネが金属ではない「ノンクラスプデンチャー」といった入れ歯があります。
これはバネが見えないので審美的に優れていますが、デメリットもあります。

そこで当院では「コーヌスクローネテレスコープ」という入れ歯治療も行っております。
バネがないので審美性に優れ、バネのある入れ歯より安定しており、しっかり噛むことができます。
また、歯が何本か抜けても入れ歯を替えずにずっと使い続けることができることも大きなメリットの一つです。

そもそもテレスコープ義歯とは、入れ歯を固定・維持する方法として、金属のバネではなくはめ込み式の機構を用いたものです。固定・維持の方法にいくつか種類がありますが、どれも金属のバネを用いないため、見た目が自然で入れ歯であることが気づかれにくい構造となっています。残っている歯(残存歯)に内冠をかぶせ、その上から外冠を装着し、外冠に人工歯をかぶせるという方法です。内冠と外冠をぴったりとはめ込むことにより、義歯を固定するために噛む力も従来の義歯より回復します。
テレスコープ義歯を行うためには、歯数、歯のポジション、生活歯の有無、歯周病の状態、メイテンナンスの状態が大切になります。

デメリットはかぶせる必要があります。その分しっかり安定した噛める入れ歯を作ることができます。
かぶせる歯が最低でも4~5本以上必要なためそれに該当する場合には良い治療法と言えるでしょう。

ドイツやスイスではいまだに信頼されて伝統的に長く行われている治療法となります。
インプラントでなくても長持ちして安定して噛むことができる入れ歯「コーヌスクローネテレスコープ」は、満足されている患者様が当院においても多くいらっしゃいます。

シリンダーテレスコープ

1886年にアメリカのR.W.Starrによって、着脱式のブリッジとして発表され、その後、義歯に応用されて出来たのが、シリンダーテレスコープです。茶葉を入れる茶筒を思い浮かべていただくと、分かりやすいかと思います。ひっくり返しても強い衝撃を与えても茶筒の蓋はとれません。それは、装着の初めから終わりまで摩擦力で維持されているからです。その仕組みを使用したのがシリンダーテレスコープで、長期的に歯牙に負担を与えるために一部被覆型の物が好まれて使用されます。

コーヌスクローネテレスコープ

1968年、ドイツのKH Koerberによりシリンダーテレスコープの欠点を補う方法として提案されたのがコーヌスクローネテレスコープです。摩擦力で維持されてきたテレスコープを、内冠と外冠をくさび力で固定維持する形式にしました。摩擦力では取り外しにくい事がありましたが、くさび力にしたことで噛む力を維持しながら、取外しやすくし、メイテンナンスもしやすくなったのが特徴です。

レジリエンツテレスコープ

1973年にドイツのM.HofmannとF. Ludwigによって、残っている歯が少ない場合でも適応される義歯として発表されました。残っている歯が少ない場合、できるだけ歯に負担がかからないようにする必要があります。この方法は、コーヌスとシリンダーの混合型です。歯頸側にはシリンダー型(摩擦力)、歯冠側にはコーヌス型(くさび力)を使用しております。コーヌスクローネが使えないケースに用いられます。

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