審美歯科治療

1.審美歯科治療で大切なこと

お口の中の究極の審美というものは「機能美」だと考えています。
人間が生きていく中で健康を保つためには食事をきちんと摂れることが大切なのは言うまでもありません。
そして食事をとるためには噛む、咀嚼(そしゃく)することが通常、必要となります。

咀嚼、噛むことがきちんとできることのメリットは、
・唾液が分泌されることで食べ物の消化を助ける
・肥満防止につながる
・セロトニン(神経のバランスを整える物質)の分泌を促す
・脳の刺激(ボケ防止)につながる

また子供にとっては、
・良い咀嚼は発育に大きく影響する
・食習慣、食生活が子供の健康に影響する
・健康的な歯並びに影響する
・表情筋、顔の引き締め効果につながる

といったものがあり、咀嚼、噛むことはとても重要なのです。

ですから、長期的に噛めることが健康的で豊かな生活を享受できるポイントだと言えますし、長い間、咀嚼機能を維持出来ていることが本当の意味での美しさ(審美)=機能美ということをお伝えしたいと思います。

フランス南部に「ポン・デュ・ガール」という世界遺産に登録されている、水道橋があります。
西暦50年頃に古代ローマ時代に建設された建造物ですが、大洪水に何度も見舞われたこともあるこの水道橋は決して崩れることなく、約2000年を経た今でもその美しさは私たちを魅了し続けています。

私自身この水道橋を訪れたことがありますが、見た目で美しいのはもちろんのこと、よくよく細かな部分を見ても、石の組み方一つとっても、ものすごく緻密であることに感動したことを今でも覚えています。

この「ポン・デュ・ガール」が身をもって証明してくれているように、「本当に長く安定して風雪に耐える美しい構造物は、細かいところにおいても緻密にできている」という原理原則は、審美歯科治療においても決して例外ではなく、その緻密さを目指していくことが、真の美しさ=機能美を実現できるというように思います。

2.審美歯科治療でおさえるべき4つのポイント

歯科審美治療においては「エステティックトライアングル」(L.Zetu. 2005.より引用改変)に沿って、治療を組み立てていくということが大事だと考えています。

① 硬組織(歯・骨)と軟組織(歯ぐき)の予防

第一に今お口の中にある硬組織(歯・骨)および軟組織(歯ぐき・粘膜)をどのように維持保存していくかが基本的なベースとなります。
当然、虫歯になれば歯を失うことにつながりますし、歯周病の進行によって骨がなくなることもあります。
治療が必要ではないものを悪くさせないこと、病気になっていないものを病気にさせないこと、つまりお口の中の硬組織や軟組織の健康な状態をメンテナンスや予防によって維持していくことが最もベーシックな部分と言えます。
歯についた汚れなどをとって、歯の本来の美しさを取り戻すためのホワイトニングなども個々のポイントに位置します。

② 硬組織(歯・骨)の評価

その次に大切になってくるのは、硬組織(歯・骨)の状態を評価することです。

建物でいえば、家の大黒柱が悪ければ家は崩れます。
そしてその地盤にもし問題が起きていたら、いかに良い建物を建てたとしても地盤沈下で機能しなくなることもあります。
お口の中も同じように歯牙(大黒柱)や骨(地盤)が大切でお口の機能を支えているそのものとなります。
歯や骨を失わせないようにするためには病気が進行中であればいかに早く正確にストップさせるかです。そして歯や骨がすでに失われていればいかに改善していくかが重要になってきます。
治療方法として、可能な限り歯を削らないコンセプトとしての低侵襲(Minimal Invasive)な修復処置です。
これは天然の最強の歯の鎧はエナメル質です。それをいかに残すかがとても重要になることから始まります。また歯を破折させないという意味でも象牙質をいかに減らさないかも重要なコンセプトです。

また、歯を安定させているのは骨ですから、どんなによい歯であっても骨の状態が良くなければ最終的に抜けてしまいます。
ですから歯を残すうえで骨量の維持と保存というのはとても大切となります。
その方法として歯周基本治療などの歯石取り、歯周外科治療である歯肉剥離掻爬術や切除療法、歯周組織再生療法などがあります。

③ 軟組織の評価(歯ぐき・舌・筋肉)

その次に重要なのが、軟組織(歯ぐき・舌・筋肉)の状態を評価することです。
硬組織のマネジメントとともに歯ぐきや舌、筋肉などの軟組織を整えるかも大切になります。
歯ぐきを整えることで、硬組織、とくに歯を支える骨を守ることができるようになりますし、さらに舌や筋肉で発音や見た目が大きく影響してきます。

具体的には歯周治療と主に関係してくるものは歯ぐきが減ってしまったときの歯周外科治療(歯肉移植術)を行うケースです歯並びにや発音に関係してくるものが口の周りの筋機能のマネジメント(MFT)があります。
歯ぐきが健康な状態になり、形がきれいに整えば、歯を支えている骨も守ることができますし最終的に被せものが必要であれば美しく被せることができるようになります。そして美しい歯並びを維持しやすくもなります。

④ 補綴・修復(かぶせもの)

最後は補綴・修復となります。
一般的なイメージとして審美は「見た目」といったことになりますが、奥歯より前歯が顔貌の中の顔のパーツの一つの審美として捉えられやすく、有名でさらに言えば上の6本の歯が、見た目の大きな要素となります。

P.Magne/U.Belser. 2002が提唱している「審美的に評価するときの基本的な基準」というものがあります。


<審美的に評価するときの基本的な基準. (Magne/U.Belser. 2002より引用改変)>

これは、前歯の修復において押さえるべきポイントの基準となりますが、当院での補綴・修復治療において、これらトータル14のポイントを押さえることで美しさを追及しています。

美しくするためには「型」が必要ですが、このトータル14ポイントを「型」として、お一人おひとりそれぞれの顔貌に合わせて表現していくことで、最終的な見た目の美しさを実現することができるのです。
当然ですが奥歯にも奥歯の「型」があります。
主にかみ合わせにおける機能面が大きく影響します。
専門的ですが、咬合高径や咬合平面、歯列弓、咬合面形態が代表的な「型」です。

<補綴・修復物の材料について>


審美歯科治療の補綴・修復物として使用する材料としてはセラミックが代表的な材料となりますが、セラミックと一口に言っても単純に1種類ではなく、ジルコニア、長石、ニケイ酸リチウムなど様々な種類があり、それぞれ硬さも違えば、それぞれのメリットデメリットがあります。
これら様々な材料を、患者様の部位や希望に合わせて選んで使い分けていくことが大切です。

セラミックを選ぶことは大切ですが、セラミックを使ったから間違いなく良い治療というわけではなく、その前準備であるかぶせる歯の形をきれいに整えたかどうかや、きれいに型取れたのかというのも重要な要素となります。

3.最後に当院がお伝えしたいこと

冒頭で「ポン・デュ・ガール」を例に構造物のお話をしましたが、お口の構造でいえば、人によってそれぞれの顔貌や骨格があり、その中に上顎、下顎があります。
そして歯が並ぶことで歯列ができ、咬み合わせの面として存在します。
それらは歯の一本一本で構成されています。
前歯なのか奥歯なのか位置によって形態が異なってきます。
また上顎と下顎によってできた空間に、空気の通り道があり、舌が存在し、口の周りには筋肉も存在しています。
下顎と上顎の接しているところに顎関節があります。

それぞれの構成要素が関わりあう構造の中で、緻密に均衡を保ったバランスがよい状態を得られれば、噛む、咀嚼(そしゃく)する、いわゆる自由に健康的に歯が動くように機能することができ、真の機能美として存在することができます。

「ポン・デュ・ガール」の橋のように、長く機能と美しさを保つことのできる構造物というのは、細かく緻密に組立てていくものから生まれるものだと考えています。
当院では、一つ一つの土台をクリアして、エステティックトライアングルのピラミッドが完成して初めて「最適な審美=オプティマルエステティック」が実現できると考え、これまでも、そしてこれからも審美歯科治療を追い求め続けています。

またお一人おひとりそれぞれに違う顔貌があるように骨格の形態から歯の形態、骨の量や歯ぐきの量、筋肉量、歯並びなどがあります。お一人おひとりにあった美しさがあります。
その美しさを叶えることが本当の意味で機能美を兼ね備えた審美歯科治療であると思いますし、その結果、患者様の健康を長くサポートすることにつながることだと考えています。

症例

症例1

前歯の歯根破折のため抜歯となり4本歯がない状態となりましたが、
骨造成とインプラント治療により機能回復を行った症例です。

症例1の詳細になります。

治療内容 骨造成を伴う前歯2本のインプラントによる4本ブリッジ補綴治療
治療期間 18ヶ月~24ヶ月
費用 1,230,000~1,500,000円

症例2

前歯の2本が歯根破折のため抜歯後、骨造成とインプラント治療が必要となり、
同時に隣の2本の被せもの治療したことで機能回復を行った症例です。

症例2の詳細になります。

治療内容 隣同士の前歯の2本が歯根破折のため抜歯しなければならず、インプラント治療を行うために事前に骨造成を行い、インプラントを1本、埋入し、同時に合計4本の被せものを最終的に行って治療を行った症例です。
治療期間 18ヶ月~24ヶ月
費用 1,230,000~1,500,000円

症例3

前歯3本にセラミックによる被せもの治療を行った症例

症例3の詳細になります。

治療内容 被せものがとれたことで被せ直しが必要となり、歯ぐきのラインを可能な限り整えて、3本の前歯を被せなおして、審美的に治療を行いました。
治療期間 6ヶ月~
費用 450,000~550,000円
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